予防歯科は、むし歯や歯周病などの予防処置を行いながら、お口全体の健康を維持管理するための処置です。

「歯科医院は、痛くなったら行くもの」と思っている方はとても多いでしょう。でも、歯が悪くなったということは歯を削って治療することですので、決してむし歯になる前の状態に戻るわけではありません。しかも、一度治療した歯は再治療のリスクが高くなり、やり直し治療を繰り返していくと歯はボロボロになり、ついには失ってしまいます。事実、日本人の80歳時での残歯数は7~8本。いかに深刻な問題であることかがおわかりいただけるでしょう。
予防歯科で、自分の歯で噛める喜びを
平均寿命が延びた今、80歳になっても元気な方が増えてきました。それとともに歯の健康意識も変わってきて、口腔ケアに力を入れる方も増えています。これからの歯科治療は、削って治療するのではなく、削らないで予防していくことが大切です。
歯科医療の目的は、しっかり噛めるように治し、その状態を維持することです。80歳になってもご自身の歯で食べられれば、心と身体も健康になって、豊かな人生を過ごせるようになります。そのためにも、当院では予防歯科に取り組んでいます。
カウンセリングをしていて気づくのが「将来、入れ歯になるのは当たり前」と思っている方が多いことです。そして、そう話していた方が数年後に入れ歯になると「もっと歯を大切にしておけばよかった」とおっしゃるのです。もっと早く気づいてほしかった、と思うと残念でなりません。生活の質を高めるために「歯」はとても大切な要素です。70歳、80歳になっても歯が残っていれば、人生の質が高まります。
60歳を過ぎると毎年1本ずつ歯を失う!?
60歳を過ぎてから定期的にメンテナンスを受けていると、歯を失う割合は10年に1本です。一方、メンテナンスを受けていない場合は、1年に1本の割合で歯を失っていきます。医療費を比較しても、残っている歯の多い方のほうが医療費負担は少なく、失った数が多い方になればなるほど、負担が大きくなっていきます。(データ参照)

患者さんにこの図をお見せしながら説明すると、皆さん納得されて、積極的にメンテナンスを受けるようになります。
メンテナンスは、生活の質を高めるスタートラインです。治療を終えても、スタートラインに立たなければもったいない人生となってしまいます。健康で充実した毎日を過ごせるよう、メンテナンスで歯を守りましょう。
当院では、すべての患者さんに対して歯周病検査を行い、歯周病を改善したあとで主訴の治療をします。歯周病治療が済み「これで歯周病は完治した」と思われるようですが、症状を改善して進行を食い止めただけです。
お口の中の環境によっては再発の恐れがあります。治療を終えたあとが予防のスタートライン、と言われるのもそのためです。現在、日本人の歯を失う原因のトップが歯周病です。歯周病で歯を失わないためにも、定期的なメンテナンスを受けましょう。
お口の健康を守る一番の近道は、メンテナンスの継続に尽きます。毎日の歯磨きでも予防効果はありますが、歯ブラシが当たりにくい部分の汚れは、自分では落とせません。それが溜まっていくと、細菌が繁殖してむし歯や歯周病を引き起こします。そうならないためには、メンテナンスを継続することです。
メンテナンスでは、歯のクリーニングを行って、お口の中をむし歯や歯周病になりにくい環境に整えていきます。同時に、むし歯や歯周病の早期発見・早期治療にもつながります。
3か月に一度がメンテナンスの周期
メンテナンスで歯垢や歯石を取り除くと、お口の中がキレイになって、むし歯や歯周病になりにくくなります。その状態を維持するには、定期的なメンテナンスが必要です。当院では3か月に一度のメンテナンスを推奨しています。メンテナンス後、3か月ぐらいで歯石がつき始めます。そのタイミングでメンテナンスをすれば、細菌の繁殖を抑えることができ、むし歯や歯周病にもなりにくくなります。3か月に一度のメンテナンスで、大切な歯をむし歯や歯周病から守りましょう。
軽い風邪や擦り傷は、自然治癒力が働いて自然によくなります。でも、歯にはその能力がありません。どんなにキレイな詰め物や被せ物を入れても、天然の歯に勝るものはありません。削らずに済むのですから、予防歯科でブラッシング指導、フッ素塗布、食事指導を受け、定期的に歯の状態をチェックしましょう。それで改善されなくても、早期治療ができるので、削る量を最小限に抑えることができ、長持ちする治療につながります。
【PMTC】歯科衛生士によるプロフェッショナルクリーニング
毎日歯を磨いていても、歯と歯の間や歯と歯ぐきの間など、歯ブラシが当たりにくい部分には汚れが残っています。こうした、自分では落とせない汚れをキレイにお掃除してくれるのが、本格的な歯のクリーニング、PMTC(Professional Mechanical Teeth Cleaning)です。当院では、歯科衛生士によるPMTCを実施しています。
PMTCは歯の専門家が行う歯のクリーニングで、歯科衛生士が専用器具を使って汚れをていねいに取り除きます。歯と歯ぐきの間の汚れも除去するので、歯ぐきが引き締まって歯肉の状態が安定します。仕上げに研磨剤を使って1本1本の歯を磨き上げていくので、歯の表面がツルツルになって、汚れが付きにくくなります。また、お口の嫌な臭いもなくなって、すっきりします。汚れとともに細菌も除去するので、むし歯や歯周病の予防にも効果的です。
【ブラッシング指導】正しいセルフケアが身に付く
予防の基本は歯磨きですが、磨き方が間違っていると、歯ぐきを痛めたり汚れが残ってしまったりして効果は半減します。正しいブラッシング方法を身に付けることが、予防の近道といえます。ブラッシング指導では、歯ブラシの当たりにくい場所の汚れの落とし方、歯の形状に合わせた歯間ブラシ・フロスの選び方と使い方などを指導しながら、正しいセルフケアを身に付けていただきます。